おしゃべりが好きなあの子は場地圭介を助けたい

「松野君、友人を救う為に命って投げ売れる?」
放課後に場地圭介君を待つため図書室で松野君は私と話しながら暇をつぶす。

「無理だろ、それは」
「だよね、私も無理だ、そんな事出来る人聖人君子かな?って」

私は未来視が断片的に見えるときがある、大抵ろくでもないことが多いのだが、場地くんと初めて会った時彼が命を投げ打って友人を助ける未来を見てしまったのだ。

「ごめんね、例え話なのに」
「別にいいよ、の小難しい話はいつものことだし、ただ、俺はお前の事好きだから死んで欲しくないなって思うくらいには」
「えっ?!何急に!」
「いや、好きだよ?普通に」

あーそう言う事ねびっくりした、ガラッと扉が開いた先に場地くんがいた
「待たせたな、千冬」と言ってこちらに向かってくる
場地くんと目が合うと

、今日も千冬の相手してくれてんのか?」
「うん、まぁ、友達だし」
「そっか、あんまり千冬に変な事吹き込むなよ?こいつはすぐ信じるからな」
「…今のは場地さんが悪いッス」
「あぁ?が小難しい話ばかりするのがわりぃよ」

松野君と場地君の言い合いをBGMにしながら私は考えていた。
場地君が死ぬあの日を私が何かを変えれば助けられるんじゃないかと……
でもどうやって?私には何も出来ないし力もない。
咄嗟に
「場地くんって将来の夢とかある?」
「なんだいきなり」「ちょっと気になって」
彼は困ったような顔をして
「あー…動物好きだから…そういうのとか」
と口ごもりながらも答えてくれた。
「動物好きならさ、将来動物園とかで働ける様に私と勉強しよう!」
「まじかよ、俺みたいなやつがなれるのか?」
「大丈夫、なれるよ!約束する」そう約束した。

次の日の放課後図書委員の仕事を終え帰ろうとしたら場地君が待っていてくれた、歩きながら話していると

「なぁは何でいつも俺に小難しい話をしてくるんだ?」
「えっそんなに小難しい事話してる?」
「自覚ねぇのかよ……」
「うーん、なんだろうね、多分場地君と話すきっかけ作りたかっただけかも?」
「それならもう達成されたろ?」
「確かに、あっでも、もっと場地君を知りたいから」
「お前、恥ずかしげもなくよく言えるな」
「いや、好きなものとかこういう時どう思うかとか内面みたいな?それを知りたいんだよね」
「へぇーなんかすげぇな」

それからも学校では毎日のように場地君と会話をした、
テスト前は勉強会をしたり休日には松野君と家に遊びに行ったりもした。
そして夏休みに入る少し前の事だった。

「場地君?最近なんか考えごと増えてない?」
「あぁ?そうだな」
場地くんは最近上の空になっているような、
「何かあったの?」
「いや別に」と言うだけで教えてくれなかった。

ある日の帰り道に場地くんといつもは見た事のない金髪のメッシュが印象的な男の子を見かけた、なんだか薄暗いじっとりとした雰囲気を感じる、その時私は今ここで何かしないと取り返しのつかない事になると思った

「場地君?お友達?」

素知らぬふりをして2人に話しかける

「あー俺の昔からのダチの羽宮一虎」
場地君はバツが悪そうに答えてくれた、

「はじめまして!場地くんと同じ中学に通ってるっていいます!」

とりあえず明るく挨拶をしてみた

「…へえ場地の友達?」
「場地くんといつも勉強したり仲良くさせて貰ってるの」
「そう、仲良いんだ」

羽宮君は場地君がほかの子と仲良くしているのが気に食わない様子だった

「うん、羽宮君ほどじゃ無いと思うけど、良かったら私とも仲良くしてね!」
「……うん」
「じゃあそろそろ行くわ」
そう言って場地君は去って行った。

場地君はあんまり私と羽宮くんを引き合わせたくない様子だったな、まぁ仕方ないよなぁさっきの子嫉妬深い子なのかもしれないし。

夏休みに入ってしばらくすると、場地君から連絡が来た。

「今日千冬泊りに来るんだけどお前も来るか?」というメッセージ、
私は友達が悲しいかな少ないので誘ってくれるのはありがたい、すぐに承諾をした。
場地君の家に着くと松野君もいた。

「お邪魔します」
「おーちゃんも泊まるの?」
「うん、ダメかな?」

やっぱり信頼しているとはいえ女子が男子と混ざって
お泊りとか駄目なのだろうか?

「別にいいんじゃね?」
「じゃあお言葉に甘えて」
場地君がお風呂場から顔を出す
「まだ風呂洗えてねーから、飯コンビニで買いに行っていーぞ」
「はーい」
「あ、風呂俺が洗うっス」
松野君がなぜか場地君の家でお風呂を沸かしてくれた、だらだらとご飯を食べたり漫画を読んだりゲームをしながら

「今日は呼んでくれてありがとうね、場地君」
「おう」
「この前会った羽宮くん?元気?」
と言うと少し表情が曇った
「まぁな、あいつとちょっと色々あってな……」
「そっか、大変だったんだね」
と言ってそれ以上は聞かなかった。

その日の夜、なんだか寝付けなくてベランダに出ると場地君がいた。

「場地君、眠れなかった?」
「まぁな」
「場地君はさ、改めて聞くけど将来何になりたい?」
「あ?急にどうしたんだよ」
「ちょっと聞いてみたくなって」

「俺は……俺は動物に関わる仕事がしたい……ってか前にも話しただろ?」
「うん、知ってるけど前はこんなに自分からなりたいって場地君は言わなかったよ」

場地君が将来の自分をよりイメージできるようになれば何か変わるかもしれない。

「……そうか?でも動物関係の仕事がしてぇなぁ」と遠くを見て言った。

「成績上がってるし大丈夫、なれるよ!」
「おぉ頑張らねぇとな」
と場地くんに頭を撫でられた。
「なぁ
「ん?」
「お前は将来なりてぇもんとかねぇのか?」
「私は将来っていうか場地君が大人になっている姿がみたいかなぁ」と言うと
「はっ?なんだそりゃ」
「なんか場地君って危なっかしいから私が隣で見守らないとなって思ったの」

場地君は笑いながら

「お前俺の母親かよ」
「えーだって心配じゃん、いつも自分だけで抱え込むタイプでしょ?」
「…否定できねぇ……」
と苦笑していた。
「ねえ?場地君、小さな頃から悩んでる事あるでしょ?松野君にも話せない」

踏み込みすぎかな?でもなにか言ってほしいと願う、

「あ?なんで分かるんだ?」
「最近一緒にいるからね大体わかるよ、私には言っても良いよ」

場地君は何か言いたそうだがすぐに口を閉じ、
片手を自身の額にもっていき、そのまま顔を覆った。

「お前に話せるような良い話じゃねぇんだよっ俺は、お前らみたいな奴と一緒にいて良い様な人間じゃねえんだ、本当は」

と言い出した、彼の切羽詰まった様子に胸が詰まり思わず抱きしめてしまった。

「別に場地君が悪い人間でも私は場地くんを好きでいるよ、それは松野君も一緒だと思う」

場地君は黙ってしまった。

「場地君、私達そんなに頼りない?私はいつでも力になるよ、だから何でも相談して欲しい」
「……ありがとよ」
と一言だけ言われた。

翌日三人で遅めの朝ごはんを食べる、すると玄関の方からドンドンとドアを叩く音が聞こえた。
「誰だろう、見て来るね」席を外すと羽宮一虎君だった。
「場地ぃ、出て来いよ」

私を遮り場地君がドアを開けた。

「……何だよ」
「俺がいない間にのうのうと生きて楽しんでたのかよっくそっ」
と言って蹴り飛ばして来た
「やめて下さい!」と言って羽宮君を止めると
「はぁ?女は引っ込んでろよ」と言って殴られそうになった。

「……ちゃんに手を出すな」
松野君が羽宮君の手を止めてくれた。

「まじで何なんだよ…場地ぃなんだよ俺ばっかり、俺は、俺は、マイキーを殺さねえといけねえのに…」
羽宮君は周りが見えていないのかどこか別世界で生きている様に見えた。

「羽宮君、落ち着いてね深呼吸しようね」
羽宮君の耳には全く届いていなかった様だ。
「うるせえなあ!!」
このままじゃだめだ!とにかく羽宮くんがお話しできる状態にならないと!
「場地君!松野君!羽宮君を拘束して!!!」
2人は驚きながらも羽宮君を拘束した。

「離せよ!くそっ」
「羽宮君、何があったの?苦しそうだよ?」
「うるせぇんだよ、放っとけよ」
息がだいぶ乱れている、
「無理です、羽宮君は今すごく苦しそうに見えます」
「知るかよ」
「ずっと辛かったんじゃ無いの?もう自分には手に負えない物を抱えてるんじゃないの?」
「俺は悪くねぇマイキーが悪いんだ、だから、俺が殺さなきゃ」

さっきからマイキー君を殺すとばかり言っている、正気じゃない
場地君のあの何かを背負い込んでいる事と羽宮君の正気じゃない態度を見ると
"何か"を羽宮君はしているんじゃないだろうか?

「羽宮君、もう自分が犯した罪がある事自覚してるよね?自覚してなかったらこんなに息を切らして叫んで無いはずだよ」
「俺は、俺は、」

ひゅーひゅーと過呼吸になりそうな一虎くんに一旦袋を松野くんに持ってきてもらい落ち着かせるように背中をさすった。

「大丈夫、ゆっくりでいいよ」
「ごめん……ごめんなさい、ごめ、なさ、」
「うん、謝れて偉いよ、大丈夫、怖かったね」
「一虎ごめん、俺がお前をあん時止めてたらこんな事にはならなかったのにな」

場地くんはひざをついて一虎くんを抱きしめた。

「場地は、何も悪いこと、してねぇのになんで…」
「あぁ、わかってる、俺が馬鹿だっただけだ」
「……場地のせいじゃねぇよ……」
「ありがとな、一虎」

2人はボロボロと涙をこぼしていた、

「とりあえず中に入ろう」
松野君にお茶を入れて貰うようお願いをした。
「はい、これ飲んで少し落ち着いた方が良いよ」と言うと
「ありがとうございます」と震えながら受け取ってくれた。
私は二人にソファに座ってもらって話を聞くことにした。

「まず、私と松野君は2人がしてしまった事について聞きたいんだけど良いかな?」

二人はコクリと首を縦に振ってくれた。
場地君が重い口を開いた

「最初は些細なことだった…でもマイキーの誕生日にバイクを渡そうとして…」

場地くんは一虎君と一緒にバイクを盗もうとしたこと、そしてマイキー君の兄、佐野真一郎さんを殺してしまったことを話してくれた、それを見ていた羽宮君も後を追う様にしてうなずいた。

松野くんは「それで、そのあとどうなったんですか?」と聞くと

「一虎は少年院にはいちまった、マイキーは俺のことを許すとは言ったけど、でも」
「それで納得はしてないよね」
私が言うと場地君は
「マイキーは昔から自分の物に執着が強ぇんだ…」
「もの?」
「うまく話せねえけど、自分以外に奪われたり壊されたりすると手が付けられねえ」
「それは、例えば家族とか友達でも?」
「多分」と、
「羽宮君は?」
「俺はきっともうマイキーに許してもらえるとも思っていない…」
ふと気が付く
「羽宮君、例えば小さなころ100円ショップとかコンビニで万引きしたことない?」
「え?」
「あるの?無かったらいいのだけど」
「あります……何度か……」と言うと
「それだよ!」と言ってしまった。
「何ですか?」「どういうことだ?」
「つまりね、誰かに何かを奪われた経験や物を壊された経験があるから、自分は奪っても許されていい存在なんだって思ってない?」

言っちゃ悪いが被害者意識が相当強い子に思えた、きっと過去に酷い目に合わされたんだろうと思った。

「そんなことねぇよ!」
「羽宮君、もしね、君が本当に許されるとしたら何が必要だと思う?」
「え?」「それはね、罪の償い方だよ」
「罪を、つぐなう?」
「少年院ではあんまり教えてもらわなかった?」
普通少年院入ったらそれなりの教育がされているはずと思ったんだけど、違うのだろうか?
「何回か説明受けたけど、あんまり……」
少年院もっとよく見てくれ!と思った今は道徳的なことを話さなければ
「まずは罪を犯した反省、そう羽宮君はマイキー君のせいじゃなくて自分が窃盗をしたこと、お兄さんを殺した事という事実を受け入れて反省をする」
と言ったところで松野君が

「でも反省したところでもう取り戻せねえよ……」と呟いた。

「じゃあ、もう一度聞くよ、羽宮君はどうやってその事実を受け入れる?」

「俺、俺が殺した事を受け止めるよ、……でも俺これからどうしたらいいかもう分からない」

重い空気が流れる。

「私も正解を導き出せる事じゃないのは分かってる……けど今から出来ることを手放すつもりも無いから」
「なんだよそれ」
と羽宮君が聞いてきた

「とりあえずもう同じ過ちをしない事、羽宮君もうしちゃいけない事わかる?」
「うん、窃盗をしない事、人を殺さない事」
「そう、だからマイキー君を殺そうなんてしちゃだめだよもちろん窃盗もね」
と念押しをしたらコクっとまた泣きそうな顔で首を縦に振ってくれた。

「なあ
「どうしたの場地君」
「俺は一虎に加担しちまった、それで真一郎くんを殺しちまった……」
「場地くんも罪の意識があるんだよね」
「ああ、俺は罪を償うなら死んでもいいっていつも思ってた」
「死ぬことが贖罪になると思っているの?」
「そうだろ?」
「場地君はさ、マイキー君の幼馴染みだし尊敬しているんでしょ?」
「まあ、そりゃあな」

「マイキー君は場地君が死んで喜ぶとでも思ってるの?ここにいる皆も場地君が死んだら辛いよ、場地君のお母さんだって……」

つい熱がこもってしまう

ちゃん、俺も場地さんが死んだら辛いっす嫌っスよそんなの」と言う松野君。
「でも、俺……」とまだ踏ん切りがつかない様子だった。

「場地くんがする罪を償うことは周りの人を幸せにすること、しちゃいけないことをしようとしている人を止めること」

「止めること?」

「そう、それが場地君が出来る事だと思うの」
「……わかった」
とやっと受け入れてくれた。

「一虎君も周りの人を幸せにしてあげるの、人を救って何が最善か常に考えることが罪を償うことだと私は思う」
「わかりました……俺やれるだけ頑張ってみる」
私の言ったことを二人は受け入れてくれて安堵した、

「あの、さん」
「どうしたの羽宮君?」
「ありがとう、なんかちょっと気持ちが落ち着いったっていうか…」
「それは良かった、羽宮君も友達だからね最初に会ったとき仲良くしたいって言ったでしょ?」
「あぁ、そうだったな」
とすこし笑顔を見せてくれた。

そもそも人を殺してこんな短期間で出所できたのはマイキーくんが早く出してあげてくださいとか言ってないのかしら?と思うがこればかりはマイキーくん本人に聞いてみないとわからないことだ、ただ彼が更生してくれるといいなと思った。

それから数日後、羽宮君が
「この間はごめん!あと色々話してくれてありがとうございます!」とお礼を言われた。
「こちらこそ場地君今まで悩んでることとか口を割らなかったからいい機会だったよ」
「あいつ良い奴だからなぁ...あっ今度なんか奢るわ!」と言われたので
「じゃあクレープ食べたい!」
「じゃあまた来るな!」と言って帰って行った。
その後マイキー君がうちに来たのだが、開口一番
「一虎は!?」
「えマイキー君どうしたの?」
正直マイキー君と私は顔見知り程度だったので驚いた、もしかして羽宮君を…と思ったら
「あいつ俺に謝ったけど許してもらわなくていいとか言ってそれから顔合わしてくんねんだよ!」
と怒っていた。
「羽宮君は反省してるよ、それに今日うちに謝罪に来てくれて嬉しかったよ」と言うと
「そっか!ならよかった」
「…マイキー君って羽宮君の事恨んでないの?」
わたしは自分の家族が殺されたら許せない、もし自分の大切な人が、と想像するときっと心穏やかでは居られないだろう。だから彼を許したように見えるマイキー君に少し違和感を感じた。
「一虎は俺のダチでもあるんだ、東卍の創設メンバーなんだ…」
なるほど家族同然って感じなのかな
「マイキー君は自分の懐に入れたものは絶対手放さない感じ?」

「まあな、だから一虎の事信じてる」
「…マイキー君、すごいね強いっていうか真っ直ぐっていうのか」
「褒めてんのか、それ?」
「ほ、褒めてるよ!それに羽宮君は元気にしてるよ、でももう東卍には戻れないって決めてるから」
「なんでだよ!あんなに仲良かったじゃん!」
「まあそれが羽宮君の今出来るマイキー君に対する贖罪なんだと思うよ」
「意味わからん!俺納得できねぇ」と駄々をこねる子供のようだった。
「また暴走族じゃないところで会いに行けばいいじゃない」
「うーん、まあそうか」と言いながら帰っていった。

少し息を吐く、マイキー君は表面はかわいいけど、きっと場地君の言ってた大切な何か壊されたりしたら手が付けられないというのは間違ってないと思う。
であるならば羽宮くん自身がマイキー君の大切なものになった方が悲劇のシナリオにはならないだろう。
まあこれも私の憶測だけど、とりあえず羽宮君頑張ってほしいと願った。

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